条件編

高台に敷地を求めない。

 高齢になった時、坂道を登る事がきついし、坂道は車椅子に走行しづらいものです。前に住んでいた家で、一度だけ家内に車椅子を押して坂道を下り、散歩したことがありますが、それが最初で最後で、散歩はやめることにしました。急な勾配の坂道は車椅子から落ちることもあり、坂道の勾配、つまりスロープの勾配にも限界があります。高齢者にとっても坂道の登り降りはきついと思います。高齢者がその配偶者を車椅子に乗せて坂道を登り降りするのは無理と言っても過言ではありません。

 高台にある土地にバリアフリー住宅を建てても無駄でないと思いますが、外出や自宅周辺の散歩を考えると、バリアフリー住宅は平地に建てる事をお薦めします。

公道と敷地の高低差は0mが良い。

 大雨時に床下浸水等の心配がある時は別だが、家に入るための階段の数を少なくする為にも、スロープの勾配を緩やかにするためにも、公道と敷地の高低差は0mがよい。

 千葉県の市川市のある教会が教会堂を建てたそうですが、海抜0m地帯で年に一度か二度ある大水の為に道路から1.5mのかさ上げをしたうえで、会堂を建てねばならぬ、高齢者や車椅子には厳しい教会堂になってしまいましたと知り合いの牧師さんから、便りを貰った事があります。公道と敷地の高低差が高ければ高いほど階段の段数も多くなります。スロープをつくるにもスペースを広く取る必要があり、土地が広ければ心配はありませんが、一般の住宅は土地の広さに限界があるので、平地で公道と敷地の高低差は0mの土地にバリアフリー住宅を建てるのが理想でしょうか。海抜0m地帯でも設置可能な段差解消機があります。

 若い時に住宅建設した場合、始めからスロープを取り付ける必要はないと思いますが、そういうスペースを準備していればあわてる事はないはずです。また、そういうスペースがない場合、段差解消器の福祉機器を利用して下さい。

障害者・高齢者を二階に住まわせない。上下移動を極力さける。

 二階の上がり降りによる、転落事故を防ぐために足腰が弱っている障害者・高齢者の為に、一階にその部屋を設けるべきです。

 私は二階に行く理由もないので、我が家は普通一階にある客間を夫婦の寝室にしました。年に数回来るか来ないか分からない客のための客間より、私の為の部屋を確保しました。それでも訪問客は多いと思いますが客間がなくても困ることはありません。

 客間を将来、障害者や高齢者の為の寝室に改造することは可能です。一階に6~8畳程度の部屋を確保できる場合はなんとかなると思います。その場合でも寝室を日当たりがよくて風通しのよい所に作って下さい。

 福祉機器を利用する事と書いていて、このようなことを書くのも変ですが、二階建ての場合基本的にはエレベーターや階段昇降機を利用しないで済むのであれば、そっちの方が経済的にもいいと思います。

安全で快適な家

 火事の心配がないようにする。滑って転ぶことがないように、つまずく事がないようにする。床材は滑りにくいものを使う。

 障害者にとっても高齢者にとってもいちばん恐いのは火事です。それは一人で逃げることが出来ないからです。また、高齢者の家庭内事故による死亡事故が多いのもよく知られています。安全というのは少しでも危険を遠ざける工夫をするということだと思います。

 防犯にも注意。

段差を造らない。

 廊下と部屋、部屋と部屋、ドアや襖の敷居、風呂と洗面所の境、家の敷地内もなるべく段差を造らない。段差解消はバリアフリーの基本で、玄関もやり方で段差解消が出来ます。私はたった2cmの段差を自分の力で乗り越えることが出来ません。足を悪くした知人が5mmの厚さのじゅうたんにあがることが出来なかったと聞きました。

車椅子が回転するためには

 少なくとも直径1.4mの空間が必要であるので全ての室内(玄関も)にはその空間が必要である。

 車椅子を後向きにこぐというのは結構難しいもので、安全の面から言っても、一つの部屋に家財道具を置いた場合でも、車椅子が余裕を持ってUターンできる直径1.4m以上のスペースをほしいものです。

簡単に外出できること。非常時にすぐ外に出る事が出来るように。

 外出は室内→駐車場→公道と、周辺の散歩等の場合、室内→敷地内→公道への二つのアプローチを考慮する。車椅子の出入口が二ヶ所あるとよりベター。

 健常者にとってなんでもない外出は、車椅子生活者や歩行困難者にとって、夢、憧れ、願望、そのものです。スロープや段差解消器で外出が可能になりました。

 我が家の欠点の一つとして、外出の出口が一つしかなく、なにか予想できないトラブルの時に恐いかなと思います。

大雨時に床下浸水の心配がある時は別だが、段差やスロープを緩やかにするために土足で生活できる家も一つの考え方だと思う。

 土足というよりも、玄関土間と同じレベルの住宅を建築すればスロープの勾配も緩やかになり、外出と緊急脱出が用意になります。玄関土間と家の中の境にしるしを付けて、靴を脱ぐようにすればよいと思います。

 福岡市内にある県営住宅に入っている車椅子の方の住宅が土足で生活するタイプになっています。我が家に見物にきた筋ジスの方が家を建てられましたが、家も敷地と同じレベルの家にしてスロープの勾配を殆どなくした家を建てられました。特殊といえば特殊でしょうがそれも一つのやり方です。