将来への提案

 首の骨の脱臼で頚髄損傷となり、車椅子生活者となった私の生活を元に1997年5月に「バリアフリー住宅」のホームページを開設しました。

http://members.jcom.home.ne.jp/1653895301/

 リンク集と資料集をプラスしました。全身マヒの私は完全と言っていいほど介護される側で、私の身体を使って出来ることはそんなに多くはありません。生活の全てに於いて介助者がセットしてくれないと何も出来ません。

 皆さん私をだらしないと思わないで下さい。また、哀れに思う必要もありません。つまり私の生活は寝たきり老人の生活とよく似た生活をしています。

 大袈裟に言うと21世紀の高齢者の生活を30年も早く経験していますので、21世紀からのメッセンジャーと思っています。交通事故にあった1991年からの生活で、不便や不満や不平等、また気づいたことを提案していきたいと考えています。

 

1)住宅づくり

  • 高齢者や車椅子生活者は坂道の多い高台での生活には困難が伴います。高台にある土地にバリアフリー住宅を建てても無駄でないと思いますが、外出や自宅周辺の散歩を考えると、バリアフリー住宅は平地に建てる事を勧めます。
  • 定年になって田舎に住むことはやめた方がいいです。
  • 普通に歩けなくなったり、介護される立場になったり、車椅子生活になったら高台に住む人は子供に家をゆずるか、家を売って、平地のバリアフリーのマンションか一戸建てに住みましょう。
  • 高齢者夫婦二人の家庭が増えると思います。公共の住宅の場合も個人の住宅もマンション等も二人だけが生活できるバリアフリー住宅が必要です。

2)街づくり(私が住みたかったところは)

  • 人が歩いていける範囲内で生活できる街づくりが必要です。昔みたいに商店街や○○市場などが復活した方がいいのかも。遠くのスパーマーケットも巨大なマーケットでなく、地域密着型で自転車とバイクしか駐車できないスーパーマーケットを。もちろん、いろんなお店は車椅子や高齢者が入りやすいようにして欲しい。
  • この頃は往診しているお医者さんが少ないと思いますが、私の住む町には往診してくれるお医者さんがいて、簡単に外出できない私にとって本当に助かります。そのように私が今でも来て貰いたいと思うのは、眼鏡屋、理容(美容)、歯医者などです。既に、宅配サービスがいろんな分野でビジネスとしてありますが、昔、あった御用聞きみたいなものの復活か、それに似たシステムが出来ないものでしょうか。高齢化社会ではさらに多くの宅配サービスは必要です。こんなモノをと思う分野の中でも出張サービスが出来るのではないでしょうか。1994年の調べですが、福岡市の市民グループの調査で近くにあると助かる店舗はクリニック・食料品点・薬局・コンビニ・美容室・本屋・クリーニング店・花屋・パンケーキ屋・衣料品店・マッサージ針灸師・整骨院・貸ビデオ屋・旅行代理店・の順です。昔、あった御用聞きみたいなモノの復活です。
  • 私が入院していた飯塚のセキ損センターの売店は狭い店でしたが、電動車椅子も中にはいることが出来、買い物が出来ました。それは回遊性の店舗になっていたからです。

3)システムづくり

  • 国民皆兵ではないけれど、国民総ホームヘルパーのつもりでないと、高齢社会に対応できないかも。
  • 独居老人の財産を守るための制度が必要かも。(いつの時代も独居老人を騙す人達はいます)。1997年にこの文章書いた事が当たってしまった。
  • 役所の人事配置にお願いしたいこと。
    バリアフリーを勧めるためには、障害者(車椅子)を役所の福祉課だけに置くのでなく、建築課に置くとか土木課とかバリアフリーに関する部署は多いはずである。
  • 役所の福祉課は保育園や生活保護などの仕事があることを知っていますが、21世紀の高齢化社会を迎えている今、福祉課は高齢者福祉の仕事が多くなるはずです、どうか現場を知っている人を福祉課に配置して欲しいです。
  • 年金や税金や住民票の手続きのため、障害者や高齢者が遠くの役所に行く必要がないように、コンビニとか郵便局とかスーパーなどで役所の簡単な手続きが出来るシステムが欲しいですね。自宅にいてパソコンなどで金融・公的な決済が出来るようにしてほしい。
  • 私の身体は死ぬまで全身マヒだと言うことを分かっていると思うのですが、障害者年金の手続きのために、3年に一度更新の手続きをしなくてはなりません。こういう手続き関係は障害者やその家族にとって面倒です。
  • 阪神大震災でどれだけの高齢者が家の下敷きになったかは知りませんが、いろんな災害でいつも犠牲になるのは高齢者です。高齢者の災害死亡を防ぐために、地域の防災と地域で高齢者の家庭の把握が必要でしょう。東北大震災ではもっと多くの方が亡くなったのかと考えると辛いです。
  • 介護保険が始まりケアマネージャーにバリアフリー住宅の相談を持ちかけても、現在では何の力も知識もないと思います。バリアフリー住宅の実績がある設計士も専門業者も数少なく、多くの場合、どこに相談していいのか、どこの建築業者に頼んでいいのか、それが現実だと思います。提案としては県単位で行政、専門家などを含めたバリアフリー住宅の相談窓口及び評価機関設置が必要となってくるでしょう。
  • バリアフリー住宅の実績がある設計士も専門業者も数少ないのが、現状だと思います。大学などの建築科にはぜひバリアフリーの講座を設け、教えるようにしてほしい。現在進行形として、設計士、建築会社、現場の大工さんなどが、ぜひバリアフリー住宅の勉強会を多くの所で設けてほしい。
  • 大手のマンション建築会社、公的な県営・市営の住宅公社、住宅都市整備公団にお願いしたいのは、団地の一部をバリアフリー住宅にするのでなく、全戸バリアフリー化を望みます。全室段差をなくす事、ドア幅を80cm~85cmにする事、廊下幅を90cmにするだけでよく、あとは部屋の配置の工夫です。これくらいは金をかけなくて出来ると思うのです。また、大手の個人住宅会社のモデルハウスはバリアフリーは当たり前だと言う事を、営業の段階で施工主(若い人にも)に勧めてほしいです。

4)商品づくり

  • 福祉機器の値段の高さはどうにかならないかと思います。私たち障害者が何らかの品物を購入する場合殆どは、普通の商品を購入しているわけで、我が家でも福祉機器そんなに多くはありません。
  • 車椅子生活者や高齢者を風呂で介助する場合、現在、市販されているユニットバスの洗い場の広さではその需要を満たしていません。せめて、畳一枚半の広さは必要です。そうした場合、浴室が広くなれば冬場寒いという欠点があります。その欠点は洗い場の床暖房で解決できないでしょうか。ついでと言っては変ですが、冬場風呂場や脱衣所の寒さにより倒れる高齢者がいると聞いています。風呂場を含めて脱衣室も床暖房が出来ないモノでしょうか。勿論、その熱源は風呂を沸かすときに使うお湯を利用できると思うのですが。
  • 高齢者や車椅子生活者が風邪を引いたときや、何かの都合で風呂に入れないとき、せめて頭だけでも洗いたいと願うモノです。健常者でもその時に考えるのは、美容院に行って頭を洗ってもらうということです。美容院には上向きに寝て、洋服も顔も濡らさずに頭を洗う事が出来る椅子と頭を固定できる洗面がありますが、座ったまま洗えるとか、ベッドの上で洗える福祉機器ありませんか。
  • 私のベッドは病院にあるようなベッドです。そのベッドも折りたためるならば、さらに部屋を広く使えて便利なのですが、たぶんもっともっと便利なベッドが出来るようにメーカーにはお願いしたいものです。

5)人づくり

どんなに、いい住宅や、街づくりしても、最後は人に尽きます。

  • ストリートボランティア。町中で車椅子生活者が困っていたら助けて下さい。町中で視覚障害者が困っていたら助けて下さい。視覚障害者が駅のプラットホームで困っていたら助けて下さい。ただそれだけで視覚障害者の線路への転落事故が防げます。そのように町中での簡単な手助けをストリートボランティア(チョボラ)と言います。そうした場合必ず声をかけること。障害者の指示の言うとおりにする。無理なときはやめるか、さらに周りの人に援助を頼む。(ストリートボランティアを私のケイ損の友人が提案しています)
  • 2025年代の高齢者は20世紀の高齢者と違い、柔軟な価値観を持つべきで、ハイテクも使え、パソコンを扱えるのが当たり前の高齢者になりましょう。
  • 2025年に高齢者になる戦後世代も高齢社会に対応できる自助努力も必要です。
  • 高齢者や障害者は家族に世話になっている、福祉の世話になっている、多くの世話になっているからと言って、肩身の狭い思いをする必要はありません。私たちのあとに続く高齢者や障害者の為にも多くの提案(発言・不満・愚痴・ニーズ)が必要です。

6)その他

  • バリアフリーが福祉だけの問題でなく、政治・経済・法律・建築・土木・工学・教育・医療・福祉等のいろんな分野にわたって多くの人が興味を持ってくれるのを願っています。別の言い方するとバリアフリーは多くの分野にわたってビジネスチャンスがあります。
  • 高負担高福祉、低負担低福祉と言われますが、低負担高福祉と言うのは実現できないのでしょうか。
  • 福岡市女性センター「アミカス」発行、1994年度市民グループ調査研究支援事業グループ「めざめ」が編集した「新しい形の高齢者用住宅の可能性と必要性に関する調査報告書」の中で

バリアフリーは人に優しい。

バリアフリー住宅は高齢化社会に対応できる。

バリアフリーは新しい産業を起こせる。

バリアフリーは雇用を増やす。

バリアフリーは人を優しくする。

バリアフリーは環境にやさしい。

バリアフリーは日本をかえる。

 と信じているのです。

(バリアフリーという言葉がなくなるのが私の願い)